2025年、エンドポイントセキュリティは急速な進化を遂げています。クラウドベースのセキュリティソリューションの普及、ゼロトラストモデルの採用、AIを活用した脅威検知など、新たな技術とアプローチが台頭しています。一方で、IoTデバイスの脆弱性、高度化するランサムウェア攻撃、EDR回避技術の進化など、新たな脅威も次々と現れています。また、Windows 11のCPUサポート制限による影響も大きな課題となっています。
このような環境下で、組織はセキュリティ戦略の見直しと、最新技術の導入を迫られています。本稿では、2025年のエンドポイントセキュリティにおける10大テーマを探り、現状と課題、そして今後の展望について詳しく解説します。

10位 脆弱性管理
多様なOSやソフトウェアを常に最新状態に保つことが現実的に困難な環境で、脆弱性に焦点を当てたアプローチが注目されています。CVSS v4.0の導入により、脆弱性評価はビジネス影響も考慮した包括的なものへと進化しました。
組織における脆弱性チェックの頻度も増加傾向にあり、多くの組織が年4回以上の評価を実施しています。一方で、脆弱性ごとに是正方法が異なるため、運用面での負担が増大するという課題も存在します。例えば、あるソフトウェアではパッチ適用が解決策となる一方、別のケースではシステム設定変更や代替ソフトウェアへの移行が必要となることもあります。
是正も含めた脆弱性管理体制の構築が今後ますます重要になってきます。
9位 パスキー(Passkey)の普及
パスワードに代わる新しい認証方法として、指紋認証や顔認証などの生体認証を活用した、パスキー認証が急速に普及しており、すでに10億人以上がパスキーを有効化しています。パスキーの普及率は着実に上昇しており、消費者の認知度は2年間で39%から57%に増加しました。Apple、Google、Microsoftなどの大手テック企業が共同でこの技術を推進し、現在ではiOSやAndroidデバイスの95%以上がパスキーに対応しています。
企業導入も進んでおり、調査によると87%の企業がパスキーを導入済みまたは導入中です。特に機密データにアクセスする従業員向けに優先的に展開されています。さらに2025年末までには、世界のトップ1000ウェブサイトの4分の1がパスキー認証をサポートすると予測されています。銀行や金融機関も2025年にはパスキー導入を本格化させ、AI駆動型フィッシング詐欺への対策としても注目されています。
8位 ランサムウェア対策強化
ランサムウェアの脅威は進化を続けており、より効果的な対策が求められています。AI駆動の攻撃手法の台頭により、音声フィッシング(ヴィッシング)などの高度なソーシャルエンジニアリング攻撃が増加しています。また、データの暗号化だけでなく、データの改ざんや操作といった新たな戦術も登場しています。
効果的なランサムウェア対策にはエンドポイントセキュリティのみに頼った防御策ではなく、多層防御アプローチが不可欠となっています。多層防御アプローチの要素としては、端末のパッチ適用やソフトウェア・アップデートなどの衛生管理強化に加えて、ゼロトラストアーキテクチャの採用が有効な手段として挙げられます。
7位 モバイルデバイス管理(MDM)
モバイルデバイス管理(MDM)市場は急成長を続け、日本市場も年間成長率24.3%で拡大しています。スマートフォンやタブレットだけでなく、ウェアラブルデバイスやIoT機器まで含めた統合管理が標準となりつつあります。
最新のMDMソリューションはクラウドベースが主流となり、AIと自動化技術の統合により管理効率が向上しています。デバイスの異常検知や自動ポリシー適用機能が強化され、IT管理者の負担が大幅に軽減されています。また、セキュリティと使いやすさのバランスを重視した設計が進み、ユーザー体験を損なわないセキュリティ対策が可能になっています。
6位 クラウドベースのセキュリティ
クラウドセキュリティは大きく進化しており、Security Service Edge(SSE)をはじめとして、主要セキュリティ機能のオンプレミスからクラウドへの移行が加速しています。2025年にはSSE市場は38億ドルを超える規模に成長しています。この移行により、組織はより柔軟で拡張性の高いセキュリティ体制を構築できるようになりました。
Identity and Access Management(IAM)も重要な要素となっており、多要素認証や最小権限の原則の適用が標準となっています。AIと機械学習を活用した脅威検出と対応も注目されており、リアルタイムで異常を検知して自動対応することで、人間の介入を最小限に抑えています。

5位 脆弱性トレンドと攻撃手法の進化
サイバーセキュリティの脅威はさらに多様化しています。IoTデバイスの脆弱性が特に懸念され、家庭用スマート機器から産業用センサーまで、約7割のデバイスが何らかのセキュリティ上の弱点を抱えています。これらの機器は設計時のセキュリティ対策が不十分なまま市場に出回っており、企業内でも管理外のIoT機器が多数存在しています。
クラウド環境でも新たな脆弱性が続々と発見されています。特にコンテナ技術は効率的ですが、設定ミスによる情報漏洩リスクが高まっています。Kubernetesなどのツールを使用する企業が増える中、適切なセキュリティ知識を持った人材不足が課題となっています。
さらに懸念されるのは「Crime-as-a-Service(CaaS)」の普及です。これは犯罪ツールやサービスをオンラインで簡単に購入できるようにするもので、技術的知識がなくても高度なサイバー攻撃が可能になっています。このため、攻撃の頻度や規模が急増し、企業や重要インフラへの脅威が高まっています。
4位 ゼロトラストセキュリティモデル
ゼロトラストセキュリティモデルは「決して信頼せず、常に検証する」という原則に基づく先進的なアプローチとして定着しています。このモデルでは、内部ネットワークも外部と同様に信頼せず、すべてのアクセス要求を継続的に検証します。
主な要素としては、多要素認証、マイクロセグメンテーション、最小権限の原則、継続的監視が挙げられます。特にコンテキストベースのアクセス制御が重視され、ユーザーの位置情報やデバイスの状態などを考慮して権限を動的に制御することがコンセプトとして掲げられていますが、未だ完全なソリューションが存在しないのが実情です。
日本企業においてもゼロトラストへの関心は高まっている一方で、日本における導入は世界的に見て遅れを取っています。その要因として、実装の複雑さ、専門知識の不足、変化への抵抗、コストが挙げられます。
3位 EDR回避攻撃への対応
EDR(エンドポイント検知・対応)システムを回避する攻撃手法が進化しています。最近では「Blindside」と呼ばれる新しい技術が登場し、ハードウェアブレークポイントを利用してEDRの監視を回避します。この手法は非監視のDLLを読み込み、デバッグ技術を活用して任意のコードを実行します。
他にも、パスマスカレーディング、API hooking回避、プロセスインジェクション、リフレクティブDLLインジェクションなどの技術が使われています。特に低権限アクセスでもEDRを回避できる手法が新たに発見され、セキュリティチームに警戒を促しています。
これらの脅威に対応するには、多層防御アプローチが不可欠です。具体的には、行動分析の強化、脅威インテリジェンスの統合、エンドポイントの強化、継続的な監視と脅威ハンティング、そして定期的なアップデートが重要です。また、マネージドディテクション&レスポンス(MDR)サービスの活用も効果的な対策となっています。
2位 Windows 11のCPUサポート制限と影響
Windows 11のCPUサポート制限は、多くの組織と個人ユーザーに影響を与えています。2025年2月の更新で、Intel第11世代以降のCPUが必要となり、2018年以前に製造されたPCの多くが公式サポート対象外となりました。Microsoftはセキュリティ強化を理由に挙げていますが、この変更は大きな課題をもたらしています。
2025年10月のWindows 10サポート終了に向けて、非対応PCの更新計画が急務となっています。一部のユーザーは回避策でWindows 11をインストールしていますが、Microsoftはこれらの方法を徐々に制限しており、セキュリティ更新プログラムの提供停止も懸念されています。
企業は対応PCの割合を確認し、ハードウェア更新の予算計画を立てる必要があります。この状況は、セキュリティリスクとハードウェア更新コストのバランスを取るという難しい選択を迫っています。結果として、多くの組織はIT資産管理の見直しと長期的な更新戦略の策定を余儀なくされています。
1位 ジェネレーティブAIによる脅威検知
ジェネレーティブAIはサイバーセキュリティの脅威検知に革命をもたらしています。従来の脅威検知ツールが事前定義されたルールやシグネチャに依存していたのに対し、ジェネレーティブAIは膨大なデータセットを分析し、人間が見逃しがちなパターンを識別することで、攻撃が発生する前に予測することが可能になりました。
AIを活用したセキュリティプラットフォームは2025年までにインシデント対応時間を90%削減すると予測されています。これにより、組織は反応的なセキュリティ対策から予測的な脅威ハンティングへと移行できるようになりました。
さらに、ジェネレーティブAIはハニーポットやデコイシステムの現実性を高め、攻撃者の戦術に関する貴重なデータを収集することで、防御強化にも貢献しています。
まとめ
2025年、エンドポイントセキュリティは複雑化する脅威に対応するため、クラウドベースのセキュリティ、ゼロトラストモデル、AIを活用した脅威検知が主流となっています。一方で、IoTデバイスの脆弱性管理、高度化するランサムウェア対策、EDR回避攻撃への対応など、新たな課題も浮上しています。組織は継続的な脆弱性管理、予測的セキュリティ、従業員教育の強化など、総合的なアプローチを取ることが不可欠になってきています。
