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コラム

  TaniumKPI

「Taniumの投資に見合う成果が見えない」——経営層からそう言われ続けていませんか?

毎月パッチ適用率を集計し、脆弱性の件数を報告しても、返ってくるのは「で、結局どうなの?」という一言。Taniumを入れて数字は取れるようになった。でもその数字が"成果"として認められない。

私がこれまで支援してきた企業でも、この悩みは非常に多く聞かれます。実は「成果が見えない」には2つのパターンがあります。1つはTaniumを十分に活用できておらず、実際に成果が出ていないパターン。もう1つは、成果は着実に出ているのに、数字として見ると「まだまだできていない」ように映ってしまうパターンです。

そして、着実に成果を出しながら、それが経営層に"成果"として伝わっている企業は、実はごくわずかです。

この記事では、その差を生むKPIダッシュボード設計の考え方と、Taniumでの具体的な実践方法をお伝えします。

目次

「パッチ適用率95%」は良いのか、悪いのか

ある企業のセキュリティ担当者が、経営会議でこう報告しました。「今月のパッチ適用率は95%です」。

経営層の反応は「それは良いの? 悪いの?」でした。

経営層が知りたいのは数字ではなく「判断基準」
経営層が知りたいのは数字ではなく「判断基準」

この問いに即答できる方は、実はそれほど多くありません。なぜなら、ベースラインも目標も設定されていないからです。95%という数字を見ても、判断の基準がなければ良し悪しはわかりません。

さらに厄介なのが、目標が定まっていないと、暗黙のうちに100%が基準になってしまうということです。その結果、95%達成の努力よりも「残り5%の未達部分」に焦点が当たり、「成果が出ていない」と判断されてしまいます。

Taniumを導入して可視化が進んだ結果、むしろ「悪い数字が見えるようになった」というパラドックスに陥る企業も少なくありません。報告するたびに改善すべき点ばかりが目に付き、経営層には悪い話ばかりに聞こえてしまう。本当は改善が進んでいるのに、です。

KPMGの「サイバーセキュリティサーベイ2026」によると、日本企業の63.2%がセキュリティ予算に不足感を持っています。「成果が見えない」という評価が続けば、現状の予算を維持すること自体が難しくなりかねません。

なぜ"数字を出している"のに「成果」と認められないのか

毎月数字を出している。改善もしている。それなのに経営層から「成果が見えない」と言われ続ける。この問題には、3つの構造的な原因があります。

なぜ「成果」と認められないのか — 構造的な3つの原因
なぜ「成果」と認められないのか — 構造的な3つの原因

原因1: ベースラインと目標がない

先ほど触れたとおり、これが最も根本的な問題です。「パッチ適用率95%」は、スタート時の80%から15ポイント改善した結果なのか、目標99%に対して4ポイント未達なのかで、まったく意味が変わります。

基準がなければ、数字はただの数字です。 成果とは「どこから、どこまで改善したか」を示して初めて認められるものです。

原因2: 粒度が粗すぎて打ち手が見えない

全社一括で「パッチ適用率95%」と報告しても、経営層は「だから次に何をすればいいの?」がわかりません。

  • どの部門が遅れているのか?
  • サーバーとPCのどちらが問題なのか?
  • どの拠点に追加リソースを投入すべきなのか?

これらが見えなければ、経営層は経営資源の配分を判断できません。判断材料にならない報告は、いくら数字を並べても「成果が見えない」と評価されてしまいます。

原因3: "今の写真"しか見せていない

現時点のスナップショットだけを報告していませんか? 経営層が本当に必要としているのは、「今の状態」ではなく「未来の判断材料」です。

「今月のパッチ適用率は95%です」——これは"今の写真"です。経営層が知りたいのは「このままのペースで目標に届くのか」「追加投資すれば改善は加速するのか」「対策しなかった場合にリスクはどう拡大するのか」という未来に向けた判断の材料です。

Gartnerは2026年の日本におけるセキュリティの重要論点として、リスクダッシュボードを活用した経営層との「戦略的議論」の体制整備を挙げています。数字を報告するだけでなく、その数字をもとに経営層と「次にどうすべきか」を議論する——そのための材料を提供することが求められています。

「成果」を見せるための3つの設計原則

では、どうすれば経営層に"成果"として認めてもらえるのでしょうか。ここで必要なのは、発想の転換です。

セキュリティ報告の役割を「状態の報告」から「経営資源の最適配分を支える情報提供」に変えること。成果とは「数字が改善した」ことではなく、「その報告が経営の意思決定に役立った」ことです。

発想の転換 — 報告の役割を再定義する
発想の転換 — 報告の役割を再定義する

原則1: ベースライン起点 — まず"出発点"を明確にする

まずやるべきは、現状を分析するための軸を固めることです。

やみくもに手当たり次第、目についた問題に取り組むのが一番よくありません。パッチ適用率はあくまで1つの指標にすぎません。資産管理、パッチ管理、アプリケーション管理、ポリシー管理——これらサイバーハイジーンの主要項目について、たとえば部門別や端末種別(サーバー/PC)といった自社の管理実態に合った軸で衛生管理状態の現状分析を行い、全体像を把握することが先決です。

ベースラインがあって初めて「ここからこれだけ改善した」と成果を語れます。

原則2: リスクベースの優先度 — すべてを一律に見ない

すべての項目を同じ優先度で見るのではなく、侵害された場合の影響と侵害の可能性をもとに対策の優先度を設けて目標を設定します。

これにより、経営層と「どこに注力すべきか」の認識を合わせることができます。全体像を把握したうえで、リスクの大きい領域から集中的にリソースを投入する——この判断を経営層と共有できること自体が、「成果」の第一歩です。

原則3: 計画に基づく未来志向 — ズレから学ぶ仕組みを作る

目標を設定したら、達成に向けた計画を立てます。

計画がないと、今置かれている状態が良いのか悪いのか判断できません。そして、計画の最も重要な役割は、目標を達成することだけではありません。計画からズレた時に「何が悪いのか」を見つけるためにあるのです。

「計画どおりに進んでいない」→「どこが遅れている?」→「なぜ遅れている?」→「次にどう対処する?」——この思考プロセスが、経営層との戦略的な議論を生み出します。「今を伝える」のではなく「未来を判断するための素材」として報告を設計することが、「成果が見えない」からの脱却につながります。

成果を見せる3つの設計原則
成果を見せる3つの設計原則

Taniumで構築するKPIダッシュボードの実践

ここからは、上記の設計原則をTaniumの機能でどう実現するかを具体的に見ていきます。

Taniumで把握するサイバーハイジーン — 4つの領域で「現在地」を測定
Taniumで把握するサイバーハイジーン — 4つの領域で「現在地」を測定

ベースライン測定 — 4領域の「現在地」を把握する

まず、サイバーハイジーンの主要4領域について、Taniumの各モジュールを活用して評価指標を定めます。

衛生管理の領域評価指標の例主に使うTaniumモジュール
資産管理Tanium上の管理端末数 / 推定の全資産台数Asset, Discover
パッチ管理月例パッチの適用率Patch
アプリケーション管理必須アプリのインストール率・稼働率Deploy
ポリシー管理セキュリティポリシーの準拠率Enforce, Comply

これらの指標を、たとえば端末種別(サーバー/PC/モバイル)や部門別、拠点別など、自社の管理実態に合った軸で測定します。どの軸で見るかは組織ごとに異なりますが、「全社一括の数字だけ」から脱却し、ドリルダウンできる粒度でデータを取ることが重要です。

部門別・端末種別のドリルダウン設計

「どこが悪いのか」を一目でわかるようにするには、TaniumのComputer Groupを活用します。カスタムタグやOS情報などをもとにComputer Groupを作成しておくことで、さまざまなカットでデータを分析できるようになります。

これにより、全社一括の数字ではなく「サーバー部門のパッチ適用率が遅れている」「A拠点のポリシー準拠率が低い」といった具体的なリソース配分の判断材料を提供できます。

ダッシュボード化と定期共有

各指標のレポートは、TaniumのReportingモジュールを使って作成し、ダッシュボード化します。さらに、Tanium Connectを使えば、ダッシュボードの内容を定期的にメール等で送付する仕組みを構築できます。

Taniumコンソールにアクセスしない経営層や上層部に対しても、週次や月次で自動的に状況を共有できる点が大きなメリットです。

より高度な分析 — BIツール連携

さらに詳細な分析が必要な場合は、ReportingのデータをPower BIなどのBIツールに連携することで、より高度なデータ分析が可能になります。トレンド分析、予測モデリング、リスクの可視化など、経営報告の質をさらに引き上げることができます。

これらの仕組みにより、リスクに基づいて、現在の衛生管理状態が計画に沿っているのか、目標の達成率はどのくらいなのかを、経営層に随時共有することが可能になります。

KPIを"活きた判断材料"にする運用サイクル

ダッシュボードを作って終わりでは意味がありません。「計画からのズレを見つけ、改善につなげるサイクルを回し続けることが、「成果が見えない」からの根本的な脱却につながります。

うまくいっている企業では、以下のようなサイクルで運用しています。

週次: 状況の共有と問題発見

Tanium ConnectやReportingダッシュボードを通じて、主要KPIの状況を週次で関係者に共有します。そこで計画からのズレや新たな問題が見つかれば、優先度をつけて改善に向けた対策を検討します。

週次で共有する最大のメリットは、問題の早期発見です。月次では見つかったときにはすでに手遅れ、ということがありますが、週次なら素早く軌道修正できます。

月次: 運用の見直しと経営報告

月次で運用プロセス全体の見直しを行います。

  • 各KPIのベースラインからの改善トレンドをまとめる
  • 計画に対する達成度と、乖離がある場合はその原因を分析する
  • ドリルダウンで「どこにリソースを集中すべきか」を可視化する
  • 次月のリソース配分の提案を経営層に提示する

「悪い数字」があっても隠す必要はありません。改善トレンドとリソース投入提案をセットで報告することで、「問題を把握し、対策も考えている」という姿勢が伝わります。これが経営層からの信頼構築につながります。

四半期〜年次: 目標の見直しと中長期計画

四半期ごとに目標の達成度を総括し、必要に応じて目標やリソース配分を見直します。年次ではベースラインのリセットと目標の上方修正を行い、中長期の投資計画に反映させます。

なお、経済産業省が2026年度に開始を予定しているサプライチェーンセキュリティ評価制度では、企業のセキュリティ対策状況の可視化が求められます。今からKPIの運用実績を積んでおくことは、制度対応の先行投資にもなります。

最初の一歩——来月の経営報告を変えるために

最後に、明日からできる最初の一歩についてお伝えします。

いきなり4領域すべてに取り組む必要はありません。 しかし、やみくもに目についた問題から手当たり次第に取り組むのは避けてください。

まず最初にやるべきことは、現状を分析するための軸を固めることです。

具体的には、以下のステップで進めることをお勧めします。

  1. 全体像を把握する: 資産管理・パッチ管理・アプリケーション管理・ポリシー管理の4領域について、Taniumで取得できる現在の数値を自社に合った分析軸(部門別、端末種別、拠点別など)で棚卸しする
  2. 経営層と認識を合わせる: 全体像をもとに「どこに注力すべきか」を経営層と協議し、リスクベースで優先領域を決める
  3. 優先領域に目標と計画を設定する: 最も優先度の高い領域から、ベースライン・目標・達成計画を設定し、来月の経営報告で「計画に対してどこまで進んでいるか」を報告する
経営報告の言葉が変わる
経営報告の言葉が変わる

「パッチ適用率95%です」から、「ベースライン80%に対して95%まで改善しました。目標99%の達成は、現在のペースであればX月を見込んでいます。サーバー部門が遅れており、追加リソースの投入を検討いただきたい」へ。

報告の言葉が変わるだけで、経営層の反応は確実に変わります。

ただし、ベースラインの測定からKPIダッシュボードの構築、そして運用サイクルの確立までを自社だけで行うのは容易ではありません。特にTaniumの各モジュールの特性を理解し、経営報告に適したKPIを設計するには、Taniumの深い運用知見が不可欠です。

「成果が見えない」という評価を変えたい方は、ぜひ一度ご相談ください。