端末衛生管理(サイバーハイジーン)とは、組織が保有するIT端末(PC、サーバー、モバイル端末など)を健全な状態に保ち、サイバー攻撃を受けにくくするための体系的な取り組みです。人間の健康管理における手洗いやうがいに例えられるように、デジタル環境における基本的な予防策と言えます。
端末衛生管理(サイバーハイジーン)とは、組織が保有するIT端末(PC、サーバー、モバイル端末など)を健全な状態に保ち、サイバー攻撃を受けにくくするための体系的な取り組みです。人間の健康管理における手洗いやうがいに例えられるように、デジタル環境における基本的な予防策と言えます。
この概念は、NIST Cyber Security Framework(CSF)や CIS Controlsにおける「特定(Identify)」と「保護(Protect)」の機能に相当し、組織の情報資産を把握し適切に保護するための基盤となります。
サイバー脅威が日々進化する現代において、以下の観点から端末衛生管理の重要性がますます高まっています。
攻撃を受けにくくする
適切な脆弱性管理やパッチ適用により、システムの脆弱性を減らし、攻撃者にとっての侵入口を減少させます。これにより、攻撃を受けにくい環境を構築できます。
攻撃を防ぎやすくする
資産の状態を常時把握することで、異常な動きや不審なアクセスにすぐに気づくことができます。これにより、攻撃の初期段階で検知し、対応することが可能になります。
被害を最小限に抑える
万が一攻撃を受けた場合でも、適切な衛生管理により攻撃の特定を早め、適切な対策をすぐに講じることができます。これにより、被害の拡大を防ぎ、ビジネスへの影響を最小限に抑えることができます。
攻撃を受けてから対応するのでは、攻撃による直接的なビジネスへの影響だけでなく、復旧のために多大な時間やコストが必要となります。衛生管理を徹底することで、攻撃を未然に防ぎ、被害を最小限に抑えることができるのです。
端末衛生管理で実施すべき主な項目は次の通りです。
資産管理:組織におけるハードウェアおよびソフトウェアのインベントリを確立し、それらを常に最新に保ちます。
データ管理:データの所在を把握し、機密度に応じたデータの分類とアクセス制御を実施します。
脆弱性管理:定期的な脆弱性スキャンを実施して、検出された脆弱性に対して適切な対策を実施します。
OSパッチ管理:自動化されたパッチ管理により適切なタイミングでOS更新を行います。
ソフトウェア管理:未承認ソフトウェアの使用制限を制限するとともに、承認済みソフトウェア更新を実施します。
アカウント管理:アカウントのインベントリを確立し、多要素認証(MFA)の実装と強力なパスワードポリシーを適用します。
ポリシー管理:OS設定のベースラインを規定し、ポリシー準拠状況の定期的なスキャンと是正を行います。
これらの衛生管理を進めるうえで、どういったポイントに注意すればいいのでしょうか。多くの組織が直面する衛生管理の課題には以下のような共通点が見られます。
どこから手を付けてよいのかわからない
衛生管理基準が明確になっていない
衛生管理に対する組織全体の意識が低い/統一されていない
適切な衛生管理を実施するための体制や運用が整っていない
どのような仕組みを導入すればよいのかわからない
端末衛生管理の課題を効果的に解決するためには、闇雲に対策を進めるのではなく、体系的なアプローチが必要です。
リスク評価と優先順位付け
組織のリスク評価を適切に実施し、その結果に基づいて対策の優先度を決定することが重要です。
統一されたポリシーの策定
組織全体で統一された衛生管理ポリシーを策定します。このポリシーは、組織の特性やリスク許容度を反映した明確な基準となります。
詳細な運用手順の整備
策定したポリシーに沿って詳細かつ実行可能な運用手順を整備します。これにより、日常的な衛生管理活動が標準化され、一貫性のある対応が可能になります。
効率的なシステムの導入
運用を効率的かつ効果的に行うためのシステムの整備も不可欠です。
適切な運用体制の確立
システムや手順を適切に運用するための十分な体制を確立することも重要です。専門知識を持つスタッフの育成や必要に応じた外部リソースの活用を検討する必要があります。
プロジェクト計画と適切なマネジメント
これらすべての要素を効率よく進めるためのプロジェクト計画と適切なマネジメントが、端末衛生管理の成功には欠かせません。
端末衛生管理は、組織のIT資産を健全に保ち、サイバー攻撃から防御するための体系的な取り組みです。多くの組織が「どこから手を付けるべきか分からない」「基準が不明確」「組織全体の意識の低さ」「適切な体制・運用の欠如」「適切なツール選定の難しさ」といった課題に直面しています。
これらを解決するには、組織のリスク評価に基づく優先順位付け、統一されたポリシー策定、詳細な運用手順の整備、効率的なシステム導入、専門知識を持つ人材の確保が重要です。体系的なアプローチにより、効果的な端末衛生管理が実現できます。