多くの企業が端末衛生管理(サイバーハイジーン)に取り組む中で、「何から手を付けていいかわからない」「対策の効果が実感できない」「どれくらい対策が進んでいるのかわからない」といった悩みをよく耳にします。現場では、目についたものから手当たり次第に対策を講じてしまうケースも少なくありません。こうした混乱や非効率の根本原因の1つに、「リスク評価」を行っていないことが挙げられます。
すべてのリスクに同じように対応しようとすると、コストや時間が膨大になり、現実的な運用が困難になります。
対策の優先度が不明確なため、効果的な衛生管理が進みません。
対策の進捗や現状を客観的に把握できず、経営層への説明や改善活動も難航します。
「全て対応しないといけないからリスク評価は関係ない」という考え方は適切ではありません。限られたリソースで効率よく衛生管理を進めるためには、リスク評価が不可欠です。
リスク評価とは、以下の要素を掛け合わせてリスクスコアを算出し、「どこに対して」「どのくらいまで」「どういった」対策を取るべきかを明確にするプロセスです。
情報資産の重要度(侵害を受けた際の影響)
攻撃や脅威の発生頻度
脆弱性(もしくは衛生管理の成熟度)
リスク評価の目的は、すべてのリスクをゼロにすることではありません。リスクが高いものには優先的に対策を講じ、リスクが低いものは受容するなど、リスクスコアに基づいて適切な戦略を立てることが重要です。
情報資産の把握・分類
端末やサーバーなどの情報資産を、場所(拠点・リモート)、物理/仮想、OS、用途などで分類します。
資産の重要度を数値化(1〜3)
侵害を受けた場合の影響度を評価します。
脅威の発生率を数値化(1〜3)
その資産に対する攻撃や事故がどれくらい発生しやすいかを評価します。
衛生管理の成熟度を評価(1〜5)
NIST CSFやCIS Controlsの対策項目を参考に、各項目に対してどれだけ対策が取れているか(成熟度)を評価します。
リスクスコアの算出
リスクスコア = 情報資産の重要度 × 脅威の発生率 × (6 − 衛生管理の成熟度)
ヒートマップ化
算出したリスクスコアをヒートマップに可視化することで、対策すべき箇所が一目で分かります。
リスクスコア「20以上」:最優先で対策すべき項目
リスクスコア「10〜20」:次のステップで対策
リスクスコア「10未満」:健全な状態
このようにリスク評価を行うことで、現在の衛生管理状態を客観的に把握できます。手当たり次第の対策から脱却し、戦略的かつ効率的に衛生管理を進めることが可能となります。
端末衛生管理においてリスク評価は、「何を優先して」「どこまで対策するか」を明確にし、限られたリソースで最大の効果を生み出すための羅針盤です。戦略的な衛生管理を実現するために、まずはリスク評価から始めてみてはいかがでしょうか。