Tanium Atlasとは
従来のTanium運用
Taniumを使ったエンドポイント管理では、目的に応じて複数のモジュールを使い分ける必要がありました。
- 端末の状態を確認するには Interact でQuestionを発行する
- 脆弱性をスキャンするには Comply を開く
- パッチを配信するには Patch や Deploy を設定する
- 脅威を調査するには Threat Response に切り替える
1つのタスクを完了するために、複数のワークベンチを行き来しながら、それぞれの操作方法を理解して使いこなす必要がありました。たとえばサプライチェーン侵害を調査する場合、Threat Response、Asset、Comply、Patch、Deployと、5つのワークベンチにまたがる作業が求められます。
Atlasが変えること
Atlasでは、こうした複数モジュールの操作をAIが一手に引き受けます。
運用者がやることは、自然言語で「やりたいこと」を伝えるだけです。Atlasが必要なモジュールを自ら判断し、情報の収集、分析、対処案の提示までを一貫して実行します。
Atlasの特徴を3つに整理すると、次のようになります。
- 横断的なコントロール: 個々のモジュールを意識することなく、Atlasが裏側でPatch、Comply、Deploy、Threat Responseなどを適切に組み合わせて動かす
- AIによるレポートと対処案の提示: 収集したデータをAIが分析し、リスクの優先順位付けや対処方法を提案する。結果はグリッド(表形式)やチャートで構造化して表示される
- 安全装置としての承認フロー: パッチの配信や構成変更など、環境に変更を加えるアクションは必ず人の承認を経てから実行される。AIが暴走するリスクを防ぐ「Human-in-the-loop」の仕組みが組み込まれている
つまり、Taniumプラットフォームの総力を、AIを介して自然言語で引き出せるようになったというのがAtlasの本質です。
Tanium Atlasの概要 — 自然言語の指示からAtlas AIが各モジュールを横断的に制御し、承認フローを経て対処を実行する
具体例 — 脆弱性の発見から是正、定期レポートまで
Atlasの価値が最もわかりやすいのは、脆弱性管理のワークフローです。従来なら複数のモジュールを行き来しながら進めていた一連の作業が、チャットでの対話だけで完結します。
脆弱性管理の自動化フロー — 情報収集からリスク評価、対処案提示、承認、実行、週次レポートまでを対話で完結
ステップ1: 脆弱性の情報収集とリスク評価
まず、Atlasにこう指示します。
「環境内の端末で検出された脆弱性について、CVSS・EPSS・KEVで総合的にリスク評価を行って、リスクの高いものから順に対処方法とともにトップ10を表示してください。」
Atlasは裏側でComplyの脆弱性スキャン結果を取得し、CVSS(深刻度)、EPSS(悪用される確率)、KEV(実際に悪用が確認されているか)の3つの指標を組み合わせてリスクを総合評価します。結果はグリッドパネルに、リスクスコアの高い順に対処方法を添えて一覧化されます。
ステップ2: 対処の実行
続けて、こう指示します。
「最高リスクスコアの脆弱性に対して対処を実施してください。」
ここがAtlasの真価が発揮される場面です。脆弱性への対処は一様ではありません。OSの脆弱性であればPatchでパッチを適用し、アプリケーションの脆弱性であればDeployで更新を配信し、設定の脆弱性であればEnforceでポリシーを是正する。従来は、脆弱性の種類に応じて使うモジュールを自分で判断し、それぞれの操作方法を理解して使い分ける必要がありました。
Atlasは、脆弱性の内容に応じて適切な対処手段を選定し、該当するモジュールの設定を自動的に構成します。ただし、即座に実行されるわけではありません。
Atlasは対処内容の詳細(何をするか、どの端末が対象か、想定されるリスク)を提示し、運用者の承認を求めます。運用者が内容を確認し、「Approve」を選択して初めてアクションが実行されます。「Deny」を選べばアクションは中止され、フォローアッププロンプトで条件を修正できます。
ステップ3: レポートのスケジュール化
さらに、こう指示します。
「毎週月曜の朝にリスクスコアの高い脆弱性トップ10を自動でレポートしてください。」
Atlasはバックグラウンドエージェントを作成します。これはユーザーの操作なしに環境を自律的に監視するAIエージェントで、設定したスケジュール(cronトリガー)に従って定期的に実行されます。レポート結果はAtlasページのパネルに自動で反映されます。
ステップ4: 継続的な改善サイクル
一度作ったワークフローはAtlasの「ページ」として保存されます。ページには会話の履歴とパネルの出力がすべて残るため、いつでも前回の作業を確認して続きから再開できます。
脆弱性の発見 → リスク評価 → 対処 → 定期レポートという一連のサイクルが、1つのページ上の対話だけで構築され、以降は自律的に回り続ける。これがAtlasがもたらす運用の変化です。
Atlasの実画面 — 脆弱性リスク評価トップ10の表示とパッチ配信
活用例
Atlasの活用は脆弱性管理だけにとどまりません。エンドポイント管理の主要な業務が、Atlasでどのように効率化されるかを見ていきます。
活用例の全体像 — 資産分析、パッチ未適用調査、初動対応、準拠管理、経営レポートの5領域でAtlasが自律的な運用を実現
資産の把握とリスク分析
「環境内の端末をOS種別・IPアドレス帯・稼働サービスをもとに分類し、公開サーバー・社内サーバー・一般PCなど資産の重要度で重み付けしてください。EOLが迫っているOSや既知の脆弱性を持つ端末をリスクスコア順にレポートしてください。」
「自社環境にどんな端末があり、どこにリスクがあるのか」を正確に把握することは、あらゆる衛生管理の出発点です。同じEOL端末でも公開サーバーと社内の一般PCではリスクの重みが違います。Atlasなら、端末の属性から重要度を判断したうえでリスクをスコア化し、優先度の高い順にレポートするところまでを1回の指示で実行できます。
パッチ未適用の調査と対処の定型化
「重要パッチが未適用の端末を一覧化し、未適用の原因を分類したうえで、原因ごとの対処方法を提示してください。」
パッチが当たっていない原因は端末ごとに異なります。再起動していない、前提パッチが欠けている、ディスクの空き容量不足、Windows Updateコンポーネントの破損など、原因はさまざまで、対処もそれぞれ異なります。Atlasなら未適用端末の洗い出しから原因の分類、原因に応じた対処方法の提示までを一度に実行できます。さらにバックグラウンドエージェントとして定期的に監視すれば、同じ問題が再発した際にも自動で検知し、対処案を提示してくれます。
インシデント初動対応
「HOSTNAME-YYYで不審なアラートが発生しています。Threat Responseのアラート内容、Recorderの活動記録、プロセスツリーを調査し、対処が必要かどうか判断してください。」
「この端末が怪しい」の連絡を受けてからの初動は、スピードが命です。アラートの詳細、端末上の活動記録、プロセスツリーなど、確認すべき情報は多岐にわたります。Atlasなら1つの指示でこれらの情報を横断的に収集・分析し、状況の全体像を素早く把握できます。
コンプライアンス管理
「CISベンチマークの非準拠項目を影響範囲の大きい順に整理し、それぞれの対処方法を添えて週次でレポートするバックグラウンドエージェントを作成してください。」
コンプライアンスチェックでは非準拠項目が大量に検出されるため、「どこから手をつければいいのかわからない」という状態に陥りがちです。Atlasに優先順位付けと対処方法の提示を任せ、週次レポートとして定期的に受け取る運用にすれば、影響の大きい項目から着実に対処を進められます。
経営層向けサイバーハイジーンレポート
「部門ごとのパッチ適用率、脆弱性残存数、コンプライアンス準拠率をまとめた衛生管理レポートを生成し、毎月第1月曜にメール送信するバックグラウンドエージェントを作成してください。」
衛生管理の状況を部門ごとに可視化し、定期的に関係者へ共有する仕組みは、組織全体の意識を高めるうえで効果的です。Atlasなら、レポートの生成からメール送信までを自動化し、運用者の手を介さずに定期レポート配信が回り続けます。
エンドポイント管理はこう変わる
Atlasの登場で、エンドポイント管理において人は不要になるのでしょうか。答えは「No」です。ただし、それは悲観することではありません。人の役割が変わるのです。
エンドポイント管理の役割変化 — 作業者から設計者・意思決定者へ、Atlasが作業を支援し高い水準を維持し続ける運用へ
これまで運用者が担ってきた仕事は、大きく2つに分けられます。
1つは、情報を集め、分析し、対処を実行する作業。もう1つは、何を監視すべきか、どんな基準で対処すべきか、どこまでリスクを許容するかを決める判断です。
現実には、作業に追われて判断に時間を割けないという状態が多くの現場で起きていました。毎週のパッチ適用状況の確認、四半期ごとのレポート作成、日々のアラート対応。これらの作業をこなすだけで手一杯になり、「そもそもこの運用の仕組みは正しいのか」を考える余裕がない。
Atlasは、この作業の部分を引き受けます。人は、Atlasに何をやらせるかを設計し、提示された対処案が妥当かを判断し、実行を承認する。作業者から、ワークフローの設計者・意思決定者へ。それが役割の変化です。
この変化がもたらすのは、サイバーハイジーンの水準の引き上げです。人手では週に1回が限界だった脆弱性チェックを、バックグラウンドエージェントが毎日実行する。部門別レポートを毎月自動で配信する。高い水準を「一時的に達成する」のではなく、「維持し続ける」ことが現実的になる——それがAtlasの本質的な価値です。
まとめ
Tanium Atlasは、エンドポイント管理における「AIエージェント」の到来を意味します。自然言語で指示を出し、AIがTaniumの各機能を横断的に操作し、承認フローを経て対処を実行する。一度作ったワークフローはバックグラウンドエージェントとして自律的に回り続ける。
運用者の役割は、作業の実行者からワークフローの設計者・意思決定者へと変わります。この変化が組織のサイバーハイジーンを高い水準に引き上げ、維持し続けることにつながっていくはずです。