大手製造業 情シス課長との対話で振り返る、Tanium導入の決め手
約 1 万台の端末を少人数で管理する情シス課長が、なぜTaniumを選び、何に苦労し、今どうなっているのか。検討から導入、運用定着までを対話形式で振り返ります。
約 1 万台の端末を少人数で管理する情シス課長が、なぜTaniumを選び、何に苦労し、今どうなっているのか。検討から導入、運用定着までを対話形式で振り返ります。
「Taniumという製品は耳にしているのですが、うちに本当に合うんでしょうか」──これは、新規でTaniumをご検討中の情シス担当者の方から、筆者が最もよくいただくご相談です。

製品資料を読み込んでも、カタログ上の機能リストを並べても、肝心の「自社の状況にフィットするか」は判断がつきません。かといって、「とりあえずPoC」は工数もコストもかかり、判断の先延ばしにつながりがちです。
遠回りに見えて一番の近道は、導入済みの企業で何が起きていたのか、何が決断の決め手だったのかを具体的に知ることです。
本記事では「自社に合うか」を見極める段階に絞り、判断軸を整理します。

お断り: 本記事に登場する「佐藤さん」は架空のペルソナであり、実在の特定個人・組織ではありません。弊社がこれまでにご支援させていただいた複数のお客様の検討プロセスや悩みを再構成した、典型的な人物像です。対話形式の読み物として展開しますが、記載する判断基準・注意点そのものは実務経験に基づいた内容です。
佐藤さん(架空のペルソナ) 大手製造業(従業員 8,000 名規模)情報システム部 セキュリティチーム課長。5〜8名のチームで約 1 万台の端末を管理しており、国内拠点に加えて一部海外拠点も管轄している。少人数運用・多拠点・ツールのサイロ化・経営層へのROI説明責任――大企業のTanium検討者に共通する課題を一通り抱えている。
天野(筆者) ザッツイット株式会社 代表取締役。前職のタニウム合同会社と現職を通じて、累計100万台を超えるエンドポイント環境の支援に携わる。現在は大企業のTanium導入・運用定着を一貫して支援している。本記事では佐藤さんとの対話を通じて、検討段階のお客様に向けた判断軸をお伝えする。

天野: 佐藤さん、今日はTaniumを導入する前の状況について、改めて伺わせてください。これからTaniumを検討される方々に、どんな組織ならTaniumが合うのかをお伝えしたくて。
佐藤さん: いいですよ。うちの場合、きっかけはやはり、社内で発生したあるインシデントでした。
天野: どんなインシデントだったのか、差し支えない範囲で教えていただけますか。
佐藤さん: 原因を調べていくと、パッチが当たっていない端末があったんです。加えて、全社で入っているはずのセキュリティソフトが、なぜか入っていない、入っていても動いていない端末もあった。そういった端末からマルウェア感染が広がってしまった。幸い情報漏洩には繋がらなかったんですが、個別事象としては「ありうる話」なんですけど、大規模製造業のIT部門としては痛恨のミスでした。
天野: 経営層からの反応はいかがでしたか。
佐藤さん: 「再発防止策として、そもそもそういう状態を無くせ」という指示でした。個別の事象を叱るのではなく、構造的にゼロにしろ、と。いつも冷静な役員が、珍しく語気を強めていたのが印象的でした。
天野: 「パッチ適用漏れ」「セキュリティソフト未導入」をゼロにする、というのは言うは易しで、現場からすると相当きついミッションですよね。
佐藤さん: ええ。当時のうちは、資産管理、パッチ管理、アンチウイルス、それぞれ別のツールが入っていました。しかも、管理対象は国内本社だけじゃなく、地方工場・子会社・海外拠点まで広がっていて、約 1 万台ありました。ADもドメインが分かれていて、拠点や部門によって運用がバラバラ。全体像を正確に把握できている人間が、社内に誰もいなかったんです。
天野: そこからTaniumを調べ始めた、と。
佐藤さん: はい。経営層からの指示を受けて、「現状を正確に把握して、一元的に是正できるツールはないか」という観点で情報収集を始めました。その中でTaniumという製品があることを知った、というのが本当の始まりです。最初は名前すら知らなかったんですよ。
天野: 大企業のお客様からよく伺うのは、「端末が一体いくつあるのか、それすら分からない」という最初の一言なんです。佐藤さんの場合も、そうだったのでしょうか。
佐藤さん: まさにそれでした。台数が数百台程度の組織なら、まだ台帳と現場の気合いで管理できます。でもうちの場合、桁がまるで違う。少人数のチームで約 1 万台を見ていて、しかも拠点がバラバラで、ADの運用も統一されていなくて…手作業は完全に限界でした。
天野: 同規模のお客様とお話しすると、パッチ適用状況の月次レポートに膨大な工数がかかっている、そもそも母数が分からない、というお話が必ず出てきます。
佐藤さん: うちもそうでした。パッチ適用率のレポート作成だけで毎月何人日もかかっていました。誰か一人休むと回らない。もしその担当者が辞めたら、という不安が常にありました。
佐藤さんのお話を整理すると、組織が抱えていた困りごとは体制・拠点・規模がツールや手作業の限界を超えていたという一言に尽きます。そして、それを構造的に解消せよという経営層からのプレッシャーが、Tanium検討の直接のトリガーになっていました。筆者がこれまで大企業の検討者と対話してきた中で、非常によく見られるパターンです。
佐藤さんとの対話を整理していくと、どんな組織でTaniumが「本当に必要」になるのか、判断基準が浮かび上がってきます。以下の10項目は、佐藤さんのようなペルソナをはじめ、筆者がこれまでご支援してきた複数のお客様に共通する導入を検討する価値がある状態を言語化したものです。

ご自身の組織に当てはめて、チェックを入れてみてください。
目安としては次のように考えていただくとよいと思います。
特にチェック7(EDR/パッチ管理/資産管理のサイロ化)が当てはまる方は、Tanium と専業 EDR の役割分担を整理したEDR 主軸検討の論点を併せて参照すると、判断軸がさらに明確になります。
ここから先は、佐藤さんがどのように決断し、導入で何に苦労したのか、そして今はどんな状態になっているのかを、引き続き対話形式でお伝えしていきます。

天野: 佐藤さん、Taniumに決めた時のことを改めてお聞きしたいのですが、複数候補を検討されていましたよね。
佐藤さん: はい。個別の機能で比較するといろいろな製品があって、どれも一長一短に見える。正直、何を軸に選べばいいのか分からなくなっていました。
天野: 機能比較表を並べて、チェックマークの数で選ぼうとすると、そうなりがちです。でも検討の本質はそこじゃないんですよね。
佐藤さん: そうなんです。それで「結局、何を軸に選べばいいんでしょうか」と相談した時に、シンプルな答えが返ってきた。「今の状態が正確に見えて、しかもそこに手が届くかどうか。そこが一番大事です」と。
天野: これは検討中のお客様にいつもお伝えしている軸です。
佐藤さん: その言葉を聞いた上で、Taniumで実際に自社環境を見せてもらった時、正直、呆然としました。
天野: 何にです?
佐藤さん: 「こんなにやることがあるのか」って。パッチ未適用端末、未管理の端末、OSやアプリケーションの脆弱性…可視化された瞬間に、「うちはこんなに穴だらけだったのか」と青ざめました。
天野: それは多くのお客様が通る反応です。見えないうちは「大丈夫なつもり」でいられる。
佐藤さん: でも、同じタイミングでもう一つ気づいたんです。「呆然としたけれど、このツールなら、呆然としたまま終わらない」と。見えるだけで終わらず、是正する機能が一通り揃っていた。見えたものに対して、そのまま手が届く。これが決め手でした。
読者の方へのメッセージとしては、Tanium検討を進める際には、機能比較表を眺める前に、現状を正確に可視化できるか、可視化された問題に対して同じ基盤で是正できるかという2点を、自社の優先順位として持っていただきたい、ということです。
天野: 決断の話が明るい話だとしたら、導入フェーズには苦労もあったと思います。
佐藤さん: ありましたね(笑)。一番の苦労は、「ツールを入れればすぐ良くなるわけじゃない」という現実と向き合うことでした。
天野: そこは、検討段階から繰り返しお伝えしている部分です。
佐藤さん: ええ、「Taniumは強力ですが、今まで運用できていなかったものが、入れただけで回り始めるわけではありません」と伺っていました。当時は「そうは言っても、ツールが強力なら何とかなるだろう」と内心思っていた部分があったんです。でも、実際に入れてみると、その言葉の意味が身に染みました。
天野: 具体的には、どの辺りでそう感じられましたか。
佐藤さん: 例えば、パッチ管理にしても、「対象端末の洗い出し → 検証 → パイロット → 展開 → 例外管理 → 報告」という一連の業務フローが必要です。Taniumはこの各ステップを強力に支援してくれますが、誰が、何を、いつ、どう判断するかは、結局、社内で設計しなければならない。それができていないと、Taniumがあっても「見えるけど回らない」状態になってしまうんです。
天野: そこは、Tanium構築とあわせて運用プロセスの見直しを進めるのが定石です。運用プロセスの整備を後回しにすると、必ずどこかでほころびが生じます。
佐藤さん: それをあらかじめアドバイスいただけたのは大きかったです。おかげで導入完了後にスムーズに運用に移ることができました。
天野: 多くの組織で、「ツール導入フェーズ」と「運用設計フェーズ」が分断されています。運用設計は「導入後に考える」と後ろ回しにされがちで、そうなると、せっかく入れたTaniumが「見えるけど回らない」状態で止まってしまう。
佐藤さん: あとは、社内Tanium人材の確保ですね。最低でも1〜2名、この人が中心になってTaniumを回すという運用者を、早い段階で決めておくべきでした。これは、もう少し早く着手すればよかったな、と思うポイントです。
天野: 立ち上がりは外部の伴走を入れて定着を加速する。加えて、最終的に自走できるよう早い段階から社内のTanium人材を確保するのが大事ですね。
佐藤さん: 導入当初の支援は非常に心強かったです。最初から全部自前でやろうとしていたら、たぶん挫折していましたね。
ここまでの対話から、導入を検討されている方に伝えたいポイントをまとめます。
検討段階で導入可否を判断したあと、実際にどんなステップで「健全な状態を維持する運用」を組み立てるかを描いたサイバーハイジーン実践ロードマップを読んでおくと、PoC や運用設計の議論が具体性を持って進みます。
天野: 導入から時間が経ちましたが、今の佐藤さんのチームはどうなっていますか。
佐藤さん: 楽になりましたよ、本当に。いや、「楽」という言葉は少し語弊があるかもしれません。正確に言うと、「今の状態が正確に把握できていて、問題があればその場で手が届く」という状態が、当たり前の日常になりました。
天野: 「当たり前」という言葉が出てくるのは、すごいことです。
佐藤さん: ええ、昔は考えられなかったことです。今は、逆にそれが無い状態を想像できない。「見えない」「手が届かない」環境に戻ったら、どうやって仕事をすればいいのか分からないくらいです。
天野: 経営層とのコミュニケーションは変わりましたか。
佐藤さん: 大きく変わりました。以前は「あの事件、うちは大丈夫?」と聞かれて、数日かけて調査していました。今は、その場でダッシュボードを見せて答えられます。「この脆弱性に該当する端末は全社で○台、うち××台は既にパッチ適用済みで、残りは△日以内に適用予定です」と、具体的な数字と期限で即答できる。これは、経営層との信頼関係にとっても大きな変化でした。
天野: チームの雰囲気はどうですか。
佐藤さん: 運用者が育ったのが一番の財産です。最初は外部の伴走に支えられていた部分も大きかったですが、今は社内の運用者を中心に、自分たちで改善を回せる体制になっています。新しい運用課題が出てきても、「Taniumでこう見せて、こう是正しよう」と自分たちで設計できるようになった。
天野: それが運用定着の本当のゴールです。外部支援が常に必要な状態では、自走できているとは言えません。
佐藤さん: だから、今振り返ると、導入フェーズで運用設計と人材育成を並行で進めてもらったことが、本当に効いていると感じます。ツールだけ入って後は丸投げ、だったら、今の状態にはなっていなかったと思います。
ここまで読んでいただいて、「うちはTaniumを本格的に検討してみようか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。最後に、検討を前に進めるための具体的なアクションを3つお伝えします。

チェックリストの多くが当てはまるのであれば、実際に触ってみるのが一番の判断材料です。Tanium社や認定パートナーに相談し、自社環境でのPoCを実施することで、カタログでは分からない「うちの環境ではどう動くのか」「現場の運用者が使いこなせるか」を、生々しく体感できます。なおパートナー選びと自走化までの進め方はパートナーと進める自走化の 4 観点で整理しています。
Tanium社や認定パートナー各社は、定期的にセミナーやイベントを開催しています。実際のユーザー企業による導入事例や最新の活用情報を直接聞ける場は、検討段階ではとても貴重です。同規模・同業種の企業がどう使っているかを知ることで、自社に合うかどうかの判断がぐっと具体的になります。
直近では、Tanium社が主催する年次カンファレンス Converge Tokyo 2026 が予定されています。会場でパートナー各社と接点を持ち、後日の個別相談につなげるのもお勧めです。
弊社ザッツイットは、元タニウム社のTechnical Account Managerを務めた天野が代表を務めており、導入検討段階から実情を踏まえた適切なアドバイスができます。「チェックリストで何個か当てはまったけれど、自社には本当に合うのか不安」「PoCを依頼する前に、検討軸を整理しておきたい」「Tanium導入を決めたが、運用設計まで含めて伴走してほしい」など、どのフェーズでもお気軽にご相談ください。